「夜はなぜ眠くなるの」

健康な人であれば、子どもは夜の8時、大人は夜の9時を過ぎると自然に眠気を催すようになります。今日は健康な自然睡眠についての話です。夜になると眠くなるには、興味深い脳の仕組みが作られています。昼間過熱し疲れたスーパーコンピューターの脳は、夜間の睡眠が絶対的な必要条件です。古来、頭寒足熱とはよく言ったものです 。睡眠は脳を冷却修復し、昼間の記憶を整理整頓し 、必要な記憶を保存し不要な記憶を消去するなど 、活動により生じた排出物を洗い流す貴重な時間です 。この排出物が十分に洗浄されないで脳に蓄積するのがアルツハイマー病です。この大切な睡眠を誘発する仕組みは神秘的です。この神秘的な睡眠誘発の主役は、脳の中心部にある松果体から分泌されるメラトニン、60兆個と言われている人体を構成する細胞のエネルギー源はアデノシン三リン酸ATPです。細胞はこのATPというガソリンを燃やしてエネルギー源としています。当然、燃やした後に残渣としてアデノシンが残ります 。中でも体重の約2.6%しかない脳が全エネルギーの20%を消費する大食漢です。したがって、脳には大量のアデノシンが蓄積します。実はこのアデノシンが唾眠圧を高め眠気を誘発するのです 。メラトニンは、夕刻より分泌が始まり深夜にピークを迎える睡眠ホルモンです。強い抗酸化力を持ち、身体のサビを落とす大切な働きをします。加齢と共に減少します。歳を取ると睡眠が不十分になる原因です。

若者でも昼間の活動星が少ないとアデノシンの組積が悪く、睡眠圧の上昇不足を来たします。また夜に光を見過ぎるとメラトニンの分泌が減少し睡眠を浅くします。昼間に年齢相応に十分な活動をしてATPを消費することがアデノシンの蓄積を増やし睡眠圧を高め、良眠につながります。横着をして体を使わない、夜遅くまでスマホで遊んで光を見過ぎると自家製の睡眠障害がやってきます。

次回は睡眠薬と認知症の話しをしますが、お薬に頼る唾眠ではなく、昼間の十分な活動、エクササイズが大切ということです。